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 シャルル・デュトワ指揮 

 モントリオール交響楽団 [88年LONDON]


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 フランス的なチャイコフスキーである。フランス人の考えるチャイコフスキーであろう。モントリオールは、カナダのフランス語圏の代表的な都市であり、シャルル・デュトワもフランス語圏に生まれ育ったスイス人であって、このチャイコフスキー5番の場合は、それらフランス的な感覚が見事に花開いて、素晴らしく色彩豊かに、そして華麗に演奏されている。音楽的には、決して軽い演奏ではなく、かと言って従来のチャイコフスキーのイメージである重苦しいものでもない。シャルル・デュトワの温厚な人柄や個性が感じられる、すばらしい演奏である。また、シャルル・デュトワは、モントリオール交響楽団を世界のトップクラスのオーケストラに育て上げた指揮者であるが、それらのことも良くわかる。以下のカラヤンの演奏は、それなりに価値のあるものであり、演奏だけ取り上げれば、シャルル・デュトワ盤と比較して劣るものではないが、私はこちらの方が好きである。
 間違いなく、クラッシックCDの世界最高の録音の一つであり、100点満点の文句のつけようのない完璧な録音である。私は、このCDをレファレンスとして、既に300回以上は聴いてきた。LONDON DECCA特有の最適な奥行き感と左右の広がり感を持った音響が、低音域から超高音まで、適度な残響と艶やかさを持って、一様に捉えられている。全体にバランスが極めて良く、オーディオ的な欠点がほとんど見当たらないこと、特に周波数帯域による歪、残響時間、音の粒立ち、各パート間の音の分離と融合の具合などの違いが少ないことが、このCDの素晴らしいところであろう。これにはもちろん、ホールの素晴らしさも大きく関係している。ホールで聴く音が素晴らしければ、録音も素晴らしいとは限らない。演奏会よりも、録音に適したホールが存在するが、この教会は、まさしくそういう所であろう。
 このCDがすばらしく良く聴こえるようにセッティングすれば、全てのオーケストラソフトは、間違いなく最高の音響で再生される。私は、このLONDON DECCAの音響が最も好きである。そこには、オーディオ的な快感がある。また、ただ単にオーディオ的に心地良いだけではなく、LONDON DECCAは、常に音楽的にも優れている。


 リッカルド・ムーティ指揮
 
 フィラデルフィア交響楽団 [91年EMI]

 


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 少しゆったりしたテンポを取って、叙情的に演奏されるチャイコフスキーである。リッカルド・ムーティーはイタリア人であるが、こちらはシャルル・デュトワとは異なり、イタリア人的個性があまり感じられない。イタリア人的な感情が大きく吐露する演奏を期待すると当てが外れる。楽譜に忠実に、決して爆発せず、真摯に、しかし、ただまじめな演奏ではなく、適度に各パートを歌わせている。そのバランス感覚がこのCDの最大の良さであろう。安心して最後まで聴いていけるCDである。
  EMIらしからぬ素晴らしい録音である。たまにはこういった録音もあるのでEMIは全く音が悪いレーベルとはいえない。この録音は、DECCAのように奥行き感を表現しようとせず、左右の適度な広がりの中にオーケストラが自然にイメージされ、心地良い音響に包まれるといったことを目標とした素晴らしい録音である。すなわちPhilips方式に近いものである。ただし、完璧な100点満点の録音ではなく、ダイナミックレンジが多少狭いこと、音響の立体感に多少欠けること、音の艶や耀きが DECCAから比べると劣ることが欠点である。このCDの音響、すなわちLONDON DECCAの立体的な音場感〜奥行き感よりも、Philips方式の左右に自然に気持ちよく広がる音場感が好きな人は、このCDをレファレンスとして、セッティングしても問題ないと思われる。


 ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
 
 ウィーンフィルハーモニー [84年DG]

 


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 厳格なチャイコフスキーである。ドイツ人の考えるチャイコフスキーである。古典的な泥臭いロシア音楽ではないが。何かしら暗さが感じられるのは事実である。しかしながら、そこはやはりカラヤンの音楽であり、全楽章にわたって彫りの深い音楽が展開し、計算された美しさ、特に音の美しさといった点では、他の追随を許していない。なお、カラヤンがベルリンフィルではなく、ウィーンフィルを選んだのはこの音の美しさと大いに関係があろう。
 これは、残念ながら世界最高水準には達していない。低域が弱い。低音域のエネルギー感が感じられない。中高音域は非常に美しく、クリアに取れており、ほぼ完璧であるのに対し、低音域は多少ともスカスカで、このCDに関しては、トーンコントロールで補強しきれない。やはり、85年ごろのドイツグラモフォンの録音であり、やっとデジタルの硬さが取れてきたのは良いが、周波数帯域のバランスが取れていないのである。このCDで、オーディオのセッティングを行ってはならない。


 



 小林健一郎指揮

 チェコフィルハーモニー [96年CANYON]

 


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 本質的に音楽的な内容が高い交響曲とは思わないが、小林健一郎は、ただのこけおどしや、虚勢を張るわけではなく、楽譜に忠実にオーケストラをコントロールし、チェコフィルもまた、これに良く応えて、壮大な音響でホールを鳴らしきっている。CDとして、たくさんの指揮者やオーケストラが録音、発売されているのにもかかわらず、意外とこの曲は良い演奏がない。カラヤンのCD等は、残念ながら聴くに耐えるものではない。この曲には、相性があるようである。如何に音楽的に内容のある演奏をして、それでいて輝かしいオーケストレイションの壮大な音響や心地良いオルガンとオーケストラの融合した音響を楽しめるようにするかが、ポイントであろう。このCDを聴けば、小林健一郎が世界で5本の指に入る素晴らしい大指揮者であること、また、チェコフィルも世界のトップのオーケストラの一つであること、そして、チェコフィルの本拠地であるこの録音ホールが素晴らしい音響特性を持つ建築であることが、すぐに分かるであろう。
 EXTONの江崎氏といえば、クラッシック音楽を愛する人なら、一度は聞いたことがあるであろう。その江崎氏が、CANYONに在籍しているときの最高傑作である。硬すぎず、柔らかすぎない音で、壮大な音響が、そして、輝かしくも美しいホールサウンドが完璧に捉えられている。CDでも、ここまで素晴らしい音が出せるという良い例である。このCDも、レファレンスとして好適である。しかしながら、あまりに素晴らしい音響のため、セッティングが完璧でなくとも、それなりに素晴らしく聴こえてしまうこと、他のクラッシックオーケストラ曲とは、かなり音響効果の異なる曲のため、このCDだけでセッティングを完了してしまうのは、危険すぎる。唯一の欠点としては、サウンドに固有の味が乏しいことかもしれない。しかしながら、本来、録音物はレーベル固有の味がしてはいけないものであろう。そういう点も含めて、現在発売されているクラッシックCDの中で、前述のシャルル・デュトワのCDともに、世界最高の録音である。


 シャルル・デュトワ指揮
 
 モントリオール交響楽団 [82年LONDON]

 


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 小林健一郎盤よりも、かなり早いテンポで演奏されるサンサーンスである。チェコフィル盤と比較すると、颯爽と曲が進行していく感じがある。同様に、音楽性よりも音響効果を意識した感もある曲をうまく演奏している。若いシャルル・デュトワのスカッとさわやかな演奏の運びの中に、フランス系のオーケストラと指揮者ならではの華麗な音の響きが聴ける。
 残念ながら、さすがのLONDON DECCAも、デジタル録音の初期は素晴らしいものはなかった。試行錯誤している頃のCDである。このCDは、アナログ録音時代のLONDON DECCAの特徴である、中高域のエッジのピシッと立った、中高域に艶を持たせた音作りが認められる。そのため、多少聴き疲れする所もある録音である。是非、シャルルヂュトワには再録音を望みたいものである。リファレンスCDとしての使用は出来ない。

 

 



 リッカルド・シャイー指揮
 
 ロイヤルコンセルトヘボウ [87年LONDON]

 


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 リッカルド・シャイーは、毛並みの良い指揮者である。このCDでも毛並みの良さが感じられる。決して、何かを訴えるような、あるいは自分の気に入ったフレーズを強調するようなところのない、しかしながら、感動的な素晴らしい名演である。もはや、演奏し尽くされた感のあるこの曲は、ともすれば、特定の部分を強調するような、あるいは自分の個性を際立たせるような演奏をする指揮者が多いものだが、リッカルド・シャイーには、そういったところは全く見られない。基本的に楽譜に忠実でありながら、歌うところは歌わせて、鳴らすところはガンガン鳴らした、極めて音楽的な名演奏である。こういうところからも育ちの良さが感じられよう。多くのクラッシックのベストCDの本には、このドボルザークの9番に関して、いろいろな指揮者の推薦盤が出ている。多くは、その選者が昔聴いて感動したのであろう、古い録音が取り上げられている。残念ながら、それらは、所詮古い録音であり、今日的な基準を持って、その演奏が本当に素晴らしいかどうかは、判定できないものがほとんどである。このリッカルド・シャイー盤は、それらの本であまり取り上げられることは少ないようであるが、この演奏は間違いなく世界最高水準、少なくとも3本の指に入ると断言する。
 シャルル・デュトワのチャイコフスキー5番と同様のLONDON DECCAらしい立体的な音場感と、輝かしくも心地良い艶を持った素晴らしい大音響が聴ける。当然、録音されたホールは異なるが、こちらの方は、よりホールの素晴らしさが感じられる。さすが、世界最高の音響と評されるコンセルトヘボウである。ホールの音響で最も重要なことは、残響時間が長いことである。もちろん、長ければ長いほど良いわけではない。低域から高域まで残響時間が一様に十分に長く、耳ざわりな残響成分がないこと、そして、音に心地良い艶が感じられなければならない。これらの観点からは、このホールは完璧である。どこぞの国の洋酒メーカーの有名ホールとは、大きな違いである。唯一の欠点は、若干低域のエネルギー感が弱いこと、および中高域の音のエッジが若干立ちすぎであることであろうか。これらは、トーンコントロールでカバーできる範囲のものである。このCDの録音自体は、リファレンスとしての使用に値するが、後述するように、この曲をリファレンスとして使用するのは、あまりお奨め出来ない。


 ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
 
 ウィーンフィルハーモニー [85年DG]

 


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 ゲルマン的な演奏である。厳格に音と音響をコントロールしている様子が良くわかる。カラヤンの演奏の特徴として、私は3つのポイントが挙げられると思う。まず一つは、全ての音をレガートで演奏することが言われているが、大きな間違いではない。カラヤン以前の指揮者の演奏を聴くと、録音の稚拙さを差し引いても、(レガートでなく)一音一音が分離して聞こえるような演奏が多かったのは確かである。カラヤンは、演奏スタイルだけでなく、音楽そのものを変革した偉大な指揮者である。しかしながら、カラヤンは伝統を守り、発展させた指揮者でもあった。この演奏からは、彼の音楽に対する真摯な心が伝わってきて、感動的である。もう一つのカラヤンの演奏の大きな特徴は、厳格なテンポの維持であろう。決してオーケストラの自主性に任せるなどと言うことはなく、最初から最後まで、完璧に指揮者であるカラヤンが、オーケストラをコントロールしていることが良く分かる。この厳格なテンポの維持により、オーケストラの団員各自の音楽ではなく、指揮者カラヤンの音楽が具現されるわけである。カラヤンは"私は指示を受けるために生まれてきたのではない。指示を与えるために生まれてきたのだ"と言っていたと聞く。これは、決して傲慢な考え方ではなく、世の中にはそういう人も当然いても良いと、私は常々思っているが、少なくともカラヤンはそういう人であったと思う。3つ目の特徴は、音の美しさの追求であろう。完璧な美しい音を出すこと、そして、完璧なハーモニーを響かせることが、オーケストラの究極の目的であろう。これは、なかなかできることではない。この完璧さの追求こそが、カラヤンの非凡さであり、偉大さである。
 カラヤンこそ、デジタル録音とコンパクトディスクを普及させた功労者である。彼は、いち早くアナログ録音とデジタル録音を厳密に比較検討して、デジタル録音の圧倒的優位性を認め、1980年以降の全ての自分の録音をデジタル録音とした。残念ながらその彼も、当然のことであろうが、最初の数年間は試行錯誤の時代であった。1980年から1983年までのデジタル録音物は、音が硬く、各楽器パート間の明らかな位相のずれがあり、聴き疲れする録音物が多い。これらは逐次、現代のコンピューター技術で修正され、再発売されてきているが、十分に楽しめるものとまでは至らないものも多い。このCDは、この最新のデジタル技術で処理されて、再発売されたものである。美しい音の響きが、よりはっきりと、ストレスなく楽しめるようになった。このCDに関しては、これらデジタル処理により、最新のデジタル録音と比較しても、遜色ない出来上がりとなっている。録音の特徴としては、ドイツグラモフォンの特徴である、木の香りと石の響きのする音というところか、LONDONのような音の艶はあまり感じられないが、ドイツ人の質実剛健の心意気や価値観、美的感覚が感じられる音響である。オーディオ的には、奥行きよりの左右の適度な広がり、周波数特性はあくまでフラット、余計な響きを収録しない、十分なダイナミックレンジを確保するなどの特徴が見られる。実は、私は、グラモフォンのこの音の特徴は、あまり好みではない。グラモフォンのサウンドが好みならば、リファレンスとして使用できるCDである。


 バーツラフ・ノイマン指揮
 
 チェコフィルハーモニー [82年DENON]

 


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 ドボルザークの生まれた国、チェコのオーケストラと指揮者による演奏である。いわゆる本場物ということになろう。私は、このCDを200回以上は聴いてきた。チェコフィルは、世界最高のオーケストラであると確信する。技術的にも、音質的にも、世界最高と信じる。日本では、ベルリンフィル、ウィーンフィル、その次あたりかという感じのようだが、私は、間違いなく世界最高と確信している。まず、弦楽器群が、非常に分厚く、そして、艶のあるサウンドを響かせる。金管管楽器群も非常に強力で、腹に応えるサウンドを響かせてくれる。木管楽器群は、木の香りのするなんともいえない美しい音を、素晴らしい技術で聴かせてくれる。こんなにも全てのパートが強力で、しかも美しい艶のある音を完璧な技術で披露してくれるオーケストラは、世界にチェコフィル以外は存在しない。このCDで、ノイマンは、チェコフィルの素晴らしさを余すところなく披露している。そういう意味で、失礼ながら、このCDは、オーケストラの素晴らしさの方が光っているようなところは事実であろう。余談であるが、現在のチェコフィルの音楽監督は、ノイマンの後を受けた、ピアニスト兼指揮者のアシュケナージである。彼のファンには悪いが、アシュケナージはどう見ても、チェコフィルの音楽監督にはふさわしくない。私は、小林健一郎がチェコフィルの音楽監督に最適な人物であると信じて疑わない。
 多少古典的なデジタル録音であるが、今もって世界最高水準といえる録音である。さすが、日本の誇るDENONの録音、グラモフォンのデジタル初期の様な音の硬さや位相のずれは認められない。最新の録音と比べると、音の鮮度が多少低く、幾分クリアーさにかけるくらいで、十分楽しめる。下手な最新録音よりは、よっぽど良いくらいである。ノイマンは、99年にもチェコフィルで再録音(ただし、こちらはライブ録音)を出版しているが、あえて、この古い方の録音を推薦する。DENONの録音の特徴は、極力、色づけや録音機器による音の変化を排した自然な音~音響ということになろう。どちらかというと、LONDONではなく、グラモフォンでもなく、Philipsに似た音作りである。私は、この音作りは好みである。最近のDENONは、しかしながら、全てこういった音作りであるかというとそうでもない。中には、とんでもなくひどい物があることを明記せざるを得ない。そういった点では、LONDONは、ほとんどすべてのCDで、安心して一定水準以上のDECCAサウンドが聴けるレーベルである。グラモフォンも同様に、LONDONの次に安心できるレーベルである。Philipsは、最近は大体安心できるものが多いが、DENONと同様に、とんでもなくひどいものも存在する。このCDで、オーディオのセッティングを行っても良いが、本来ドボルザークの9番は、ダイナミックレンジが大きく、強弱の差が大きい曲なので、オーディオチェックには良くとも、セッティングの過程でリファレンスとして使用するのは、余り適当ではない。チャイコフスキーの5番あたりが、セッティング用リファレンスとしては、最適と思う。

 



 カルロ・マリア・ジェリー二指揮
 
 ロイヤルコンセルトヘボウ [90年SONY]

 


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 穏やかな8番である。ドホナーニ版と好対照である。ドボルザークの心が、淡々と、しかし、深く展開していくようである。あるときはBGM的に、あるときは情熱的に、作曲家の心のうねる様が聴き取れる。落ち着いて音楽を聴き込みたい時、あるいは逆に、軽く聞き流したい時に好適である。いろいろな意味で、テンションの高い指揮者の演奏とは違って、音楽に浸ることのできるCDである。なお、このCDは、9番とのカップリングではなく、単独の録音物である。
 適度な音の硬さと柔らかさをあわせ持った自然な感じのするサウンドである。SONYのサウンドは、DENONと多少通じるところがある。違いは、適度な左右の広がりだけでなく、立体感もあることか。中高域の艶もLONDONほどではないが、多少はある。強いて言うなら、もう少し音楽的な何かが感じられると良い。オーディオ的には、間違いなく優れた録音である。リファレンスとしての使用も可能だが、オーディオ的な快感だけでなく、音楽性も重視するクラッシックファンならば、別のCDをおすすめしたい。


 クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮
 
 クリーブランド交響楽団 [84年LONDON]

 


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 スカッとした演奏の8番である。この曲は、9番とカップリングとなっていることが多いが、ドホナーニ盤もその例にもれない。しかしながら、ドホナーニの9番は、たいしたことがない。聴くに値しない。8番は、ドホナーニはついでに収録したのかもしれないが、これは世界で一二を争う名演である。極めて彫りが深く、かつ音楽的に深みがあり、どちらかというと、BGM的な曲である8番をきりりと聴かせてくれる。多少テンションが高いところもあるが、ジェリー二盤と好対照の刺激的な8番である。
 多少とがった感じのあるLONDON DECCAである。DECCAの特徴である立体的な音場感、艶のある中高域が聴けるが、多少エッジの立ちすぎの感もある。これらは、このCDが、まだまだデジタル録音の模索の時期に録音されたものであることを証明している。しかしながら、そのハンディーを補って余りあるのが、前述の演奏の素晴らしさである。多少、中高域を落として再生するのが良いと思われる。リファレンスCDとしての使用は、無理がある。


 ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
 
 ウィーンフィルハーモニー [85年DG]

 


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 美しいレガートが聴ける8番である。ただし、これは、録音評にもあるように録音の影響も考え合わせなければならない。ドホナーニ盤の様にスカッとした演奏でもなく、ジェリーニ盤のように穏やかでもなく中庸だが、これが本来のこの曲のイメージ、作曲者の意図するところであろう。さすがカラヤン、時代の変化があっても色あせない名演を残した。
 これは、私の聴いているCD、すなわち最近のグラモフォンがすすめているオリジナルビットイメージングの施されていない、オリジナルの8番についての評価である。やはり、楽器各パート間の位相のずれが目立ち、多少聴き疲れする。中高域の音のエッジも多少立ちすぎである。しかしながら、トーンコントロール等でカバーして聴けば、まずまず楽しめるCDである。どちらかといえば、この時期のグラモフォンとしては、LONDON DECCAに似た、中高域に艶のある録音である。リファレンスとしての使用は出来ない。







 小林健一郎指揮
 
 チェコフィルハーモニー [99年EXTON]

 2CH 96kHz 24bit PDIF

 出力=DVD-Audioデジタル出力


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 素晴らしく彫りの深いチャイコフスキーである。チャイコフスキーの波うつ心が、素晴らしく実在的に表現された演奏である。間違いなく、世界最高のチャイコフスキー5番である。唯一無二の世界最高である。以下の録音評にもあるように、録音もずば抜けて明らかに世界一であるが、そういったポイントを差し引いても、過去に例のないほど、素晴らしい演奏である。小林健一郎は、カラヤンほど厳格な指揮ではなく、オーケストラの自主性を生かしながら、締めるところは締め、歌わせるところは深く歌わせて、非常に大きな表現の幅を獲得した。チャイコフスキーが生きていたら、感動するであろう演奏である。第1楽章、第2楽章、第3楽章、全て素晴らしい。第4楽章については、私は、以前から、作曲自体に問題があると感じており、元々好みではなく、ほとんど聴かないが、この楽章の出来もかなり良い方である。
 現時点では、間違いなく世界最高のオーケストラ録音である。EXTONは、江崎氏の創立したクラッシック専門レーベルであるが、このレーベルの音質は、総じてずば抜けて優れている。その中でも、特に優れたものから、DVD−AudioとSACDと同時に録音発売されたものである。これを聴いた欧米の録音エンジニア、あるいはオーディオファンは、腰を抜かすであろう、それほど異次元の素晴らしい録音である。残念ながら、このDVD−Audioを聴いてからCDを聴くと、どんなに優れたCDでもつまらなく聴こえてしまう。やはり、DVD−Audioの実力は、一桁あるいは二桁も違うと思い知らされてしまう。録音の特徴としては、適度な左右の広がりと立体的音場感、あくまでフラットな周波数特性、木の香りと石のホールの響きの聴こえる音響、固すぎず、柔らかすぎずだが、どちらかというと柔らかめの音、歪や位相の回転はほとんどなく、オーディオ特性は極めて良好、というところである。グラモフォンとSONYをミックスしたような録音であると言えるかもしれない。このDVD−Audioは、リファレンスとして最適である。私は、既に50回くらいは聴いた。実のところは、他にリファレンスとして使えるDVD−Audioがないのである。今後は、できるだけ早く良い録音のDVD−AudioをEXTONが出版してくれることを祈る。

 

 



 ダニエル・バレンボイム指揮
 
 ベルリンシュターツカペレ [2000年TELDEC]

 5CH 96kHz 24bit PDIF

 出力=2CHダウンコンバート48kHz


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 鷹揚(おうよう)な演奏である。バレンボイムは、アルゼンチン生まれのピアニストであるが、最近は指揮者として欧米で活躍している。最近のピアニストは、指揮をしたがるようだが、私は好きではない。本来のピアニストとしては一流でも、指揮者として一流の音楽家はあまりいないからだ。バレンボイムの場合は、指揮もそこそこ一流といっても良いくらいの出来だが、"ベートーベンなら、まあこんなものでしょう"という感じの演奏であって、特に感動するようなものはない。しかしながら、良質の音楽であることは事実であり、一度は聴いてみる価値はある。
 これは、TELDECにより、デジタル出力に制限がつけられているDVD−Audioソフトである。デジタル出力は、48kHz24bitにダウンコンバートされた2チャンネルミックスとなる。マルチ音声は、アナログ出力でしか聴けない。まず、2チャンネルデジタル出力は、CDより少し良い程度。たいした事はない。面白いのは、高域が少しきつく、低音がゆるゆるのTELDECの音が、DVD−Audioでも聴けること。私は、TELDECの音は好みではない。マルチチャンネルは、デジタル出力が禁止されているので、アナログで聴かざるを得なかったが、結論から言うと、これも大したことはない。確かに、後ろの方からホールの反響音が聞こえるが、ノイズも多く、音場感も不自然である(マルチチャンネルのセッティングは完璧に行なってある)。DVD−Audioの5チャンネル再生については、交響曲以外には(次回)、デジタル出力されるもっと良いソフトがある。やはり、デジタル出力されないDVD−Audioソフトは、意味がない。従って、このDVD−Audioソフトは、ちっとも良いとは思わなかった。

 

 




 小林健一郎指揮
 
 チェコフィルハーモニー [99年EXTON]

 


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 これは前述のDVD−Audioで出ているものと全く同じ録音である。
 前述のDVD−Audioと同時に録音されたものであるが、SACDらしい繊細な音響が聴ける。実は、私はあまりSACDは好きではない。何がしか、線の細さ、低域のか弱さが感じられて、好みではない。しかしながら、DVD−Audioとは異なる良さがあるのは、事実である。これは、好みで決めても良い違いであり、どちらが優れている、あるいは劣っているという程でもない様に感じている。これらは、最終的には、もう少し多くの音楽的、かつ録音の優れたソフトが多く出版された時点で、再検討するべき問題であろう。現時点のSACDソフトは、ひどすぎる。SACDソフトは、既にDVD−Audioとは異なり、数百枚(ポップスも入れて)のソフトが出版されているが、クラッシックに関しては、良い録音が極めて少ない。交響曲で推薦できるのは、残念ながら、このチャイコフスキー1枚のみである。



音楽家にとって一番重要なものは、心?技術?それとも?・・・

 音楽家にとって、最も重要なものは何でしょうか?音楽に対する真摯な"心"でしょうか、演奏"技術"でしょうか、それとも?? それは、演奏する楽曲のすばらしさや感動を音楽を聴く人に伝えようとする"エネルギー"であると思います。
  エネルギーとは、音楽に対する理解、すなわち"心"や、必要な演奏"技術"も当然含まれます。というか、これらは前提条件であって、音楽家ならば、当然身に付けていて当たり前のものであり、それ自体は賞賛には値しないものと考えるべきでしょう。聴衆に音楽を伝えようとする"エネルギー"こそが、音楽家にとって最も重要なものであり、逆に、この"エネルギー"が十二分にあれば、"心"や"技術"は一定の基準を超えていれば良いとも言い切れましょう。 アマチュア音楽家とプロの違いは、ここにあります。
  アマチュア音楽家は、基本的に自分が楽しめば良いものです。自分が楽しむために弾いているともいえましょう。プロの演奏家は、自分が楽しんでも良いのですが、聴衆に音楽のすばらしさや感動を伝えていかなくてはなりません。日本人のクラッシック演奏家が近年増えてきているのは、すばらしいことですが、この音楽を伝えようとするエネルギーが足りない、音楽に対する心や演奏技術は、ほとんど完璧なのに・・・という音楽家が多いのは残念なことです。


あなたは、オーディオマニア?それともクラッシック音楽マニア?・・・どちらであるべきか?

 クラッシックのオーケストラ音楽の完璧な再生を目指すとき、オーディオマニアックな追及は必須です。
  クラッシック音楽でも、オーケストラ以外の音楽については、必ずしもオーディオマニア的な追求をしなくとも、それなりに再生して、音楽を楽しむことが出来ます。しかしながら、オーケストラ音楽については、オーディオマニア的な追求をしなくては、十分な再生は不可能と言い切れましょう。それほど、オーケストラ音楽の再生は難しいものです。
  オーケストラ音楽を完璧に再生して、いつも言っているように、実際のコンサートホールよりも明らかに優れた音響を~サウンドを~音楽を楽しみたければ、単にクラッシック音楽マニアであるだけでなく、オーディオマニアであることが、必須条件となります。オーケストラサウンドの再生には、今まで述べてきたノウハウの総動員と徹底的な追及が不可欠です。ご健闘をお祈りします。



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