チャイコフスキー 交響曲第5番
小林健一郎指揮 チェコフィル

「1999年録音 2004年発売 EXTON SACD 5.0Surround Hybrid Disc 」
「(以下特記しないものはすべて)5CHマルチチャンネルアナログ出力にて試聴 」 


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 このディスクは、第6回で絶賛した2チャンネルディスクの5.0チャンネルSACD版である。間違いなく世界最高の演奏であり、文句の付けようがない。小林健一郎とチェコフィルの唯一無二の世界を、ごく自然な大音響空間で堪能できる。
 間違いなく世界最高の録音である。おそらく今後10年以上、これ以上の優れた録音は出てこないであろう。また、これを超えるものは、EXTONの江崎氏自らの録音であろうと推測されるほど、素晴らしい。オーディオ特性は、非の打ち所がない。きわめて自然な大音響空間が再現される。歪感、位相の不自然さなどは全く感じられないので、気がついたら素晴らしいサウンドに陶酔しているという、素晴らしい録音のディスクである。マルチチャンネルのセッティングにも適しているが、もともと音響が素晴らしいので、このディスクのみで完成とせず、他のディスクもトライしたほうが良い。


ドヴォルザーク交響曲第9番&第8番
イヴォンフィッシャー指揮 プラハ祝祭管弦楽団


「 2000年録音 2002年発売 Philips SACD5.1surround Hybrid Disc 」


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 ハンガリー中部のオーケストラである。チェコフィルほど洗練されてはいないところもあるが、特に技術的な問題点は見当たらず、さすがは本場ものの強みか、2チャンネル盤で推薦したノイマン同様、深い彫りのある演奏である。弦楽器群の完璧なピアニッシモの合奏から〜フォルテッシモの全奏、弦楽器群を貫いて前に飛び出してくる金管楽器の音、地響きがしそうな〜腹にこたえる低音楽器の迫力などなど、このシンフォニーの一番の要所である音響バランスも大変良く、心からドボルザークの“新世界”に、そして壮大なマルチ音響の“新世界”に浸ることができる。
 プラハのイタリアンインスティチュートでの録音である。素晴らしい音響空間での優れた録音であるが、第8番と第9番では、出来が多少異なる。第8番については、世界最高といって良い出来であるが、第9番については、世界最高水準に今一歩というところである。おそらく、第9番を最初に収録し、問題点を修正して第8番を収録したと思われる。第8番は、ほぼ文句の付けられない素晴らしい出来である。多少リアのレベルが高いが、位相の狂いは全くなく、フィリップスらしく自然な広がりの完璧な音響バランスであった。第9番は、マルチマイクで収録したと思われる各パートに位相の狂いが散見され、特に右フロントから左リアに音が流れるところが何箇所か聞き取れる所が気になるところである。また、左リア自体のレベルも少し高い。
  また、別の機会に詳しく述べる予定であるが、このディスクは5.1サラウンドでの収録である。本来、クラッシック録音は5.0サラウンドで収録すべきものである。私のシステムでは、前述のようにサブウーハーを設置していない。5.1収録のディスクは、デジタルプリアンプで他の5チャンネルに適宜振り分けて再生されるように設定できるから、再生上の大きな問題点はないが、自然なサウンドという点では、こういった処理を介しない5.0サラウンドの方がベターである。ソフト出版社は、今後は是非とも認識を改め、クラッシックのディスクは全て5.0で発売して欲しいものである。


リムスキーコルサコフ 交響組曲シェヘラザード
ワレリー・ギルゲエフ指揮 キーロフ歌劇場管弦楽団


「2001年録音 2003年発売 Philips(UniversalMusic) SACD 5.1surround Hybrid Disc 」
「 48kHz24bitマルチPCM録音からのDSD Mastering 」

 


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 シェヘラザードの古今東西における世界最高の演奏であり、録音である。重厚で絢爛たる音響世界が、これでもか〜これでもかと構築されていくようである。あまりの重厚さ〜きらびやかさに圧倒されてしまう御仁もいるかもしれない。しかしながら、これがオリジナルである。
 今までのCDでは、この音の重厚さときらびやかさは、全く再生できなかった。SACD Multiになって、初めて完全に再生できるようになった曲といえよう。この録音は、PCM録音からのDSDマスタリングであるが、オリジナルからDSD録音の特徴である音が空間を漂う感じは感じられないものの、クリアに見通し良い大音響が楽しめて、むしろ良かったようにも思われる。結論としては、世界最高の録音といって良いであろう。ただし、ひとつケチを付けるならば、第1曲の出だしが少し暗いサウンドである。これは、おそらく録音機器のプレヒーティングが十分でなかったためと思われる。録音アナログアンプ、あるいはDSDミキシングマシンのデジタルアンプなどである。マルチのセッティング用には、十分適しているといえるディスクである。


ニューイヤーコンサート2002
小澤征爾 ウイーンフィル


「 2002年録音 2002年発売 Philips  SACD5.0surround  HybridDisc 」

 


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 私は、今まで小澤征爾は好みではなかった。何かしら、受けを狙ったような、他の指揮者と異なるところを強調したがるような、犬的人間ではなく、猫的人間というか、女々しさが感じられていやだった。しかし、この演奏を聴いて、そのような感慨は吹き飛び、小澤征爾が世界で10本、いや5本の指に入る偉大な指揮者となったことが理解できた。もはや、音楽家としてだけではなく、人間的にも偉大という領域に達しているといえるかもしれない。演奏される曲目は、ウイーンの小品であるが、それぞれが非常に彫りの深く、よく研究されたものであって、じっくり聴くに値する、洗練された演奏であった。
 よく計算しつくされた感のある完璧な録音。ライブ録音であるが、ライブのハンディは全く感じられない。むしろ、ホールの中央前よりのフロア席に陣取っているかのような素晴らしい臨場感のある完璧なライブ録音である。この録音は、フィリップスレーベルの広がりを重視した自然な立体音響の特徴とは若干異なり、近めの音像と全域に広い音場で非常に優れた録音であった。


ルートヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェン 交響曲第9番作品125<合唱>
小澤征爾指揮 サイトウ・キネン・オーケストラ


「2002年録音 2003年発売 Philips(UniversalMusic) SACD 5.0surround Hybrid Disc 」
「48kHz24bitマルチPCM録音からのDSD Mastering 」

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 白熱のライブ録音である。男性合唱が多少ハッスルし過ぎであり、その分、女声合唱が相対的に弱く感じられるが、独唱者と合唱団のレベルは、間違いなく一流であり、オーケストラにも欠点は見当たらない。音楽的には正統なベートーヴェンの優れた演奏であった。少なくとも、現在までに出版された第9の演奏としては、世界最高水準である。
 こちらもPCM録音のDSDミキシング録音であるが、特に大きな欠点は見当たらなかった。音が空間を漂うようなオリジナルからDSD録音の優れた特徴は感じられないもの、PCM録音の特徴であるクリアに見通し良いダイナミックな音響世界の再現と言う点では間違いなく良い録音であり、世界最高水準といえるであろう。ライブ録音のハンディと思われるが、演奏のスケールは大きかったが、サウンドイメージは小さめで、音響空間の雄大さは、あまり感じられなかった。


ルートヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェン 交響曲第5番&第7番
カルロス・クライバー指揮 ウィーンフィル


「1975年&1976年録音 2003年発売 D.Grammophon(UniversalMusic) SACD5.1surround Hybrid Disc 」
「 アナログ録音からのDSD Mastering 」

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 昔懐かしいアナログ録音のディスクである。アナログ全盛期 & カルロス・クライバー全盛期の良好な演奏&録音である。今から20数年前、私の学生時代、バイオリン練習をやめてオーディオ趣味をはじめた頃、このサウンドを聴いていたのだなあ、という感慨がよみがえってきた。演奏のレベルを最新のSACD Multiディスクと同一レベルで比較することは、もともと不可能である。以下の録音評で述べるとおり、音響の再現性は明らかに数段落ちるからである。とはいえ、クライバーとウイーンフィルのこの演奏のレベルは、世界最高水準であると信じたい。
 最新のデジタル録音、SACD のDSD録音と比較すれば、一目瞭然、低域がゆるい、ダイナミックレンジが小さすぎる、現在のような5チャンネルマルチの発想はなく、また、位相管理も不十分でリアからも盛大に音が聞こえるなどなど、レベルは低い。このディスクは心で聴くべきものであり、この時代にこの音を聴いた人間でなければ、本当の良さは感じられないであろう。


チャイコフスキー交響曲第5番
アシュケナージ指揮 フィルハーモニア管弦楽団


「 2002年録音 2003年発売 EXTON SACD5.0surroud HybridDisc 」

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 小林健一郎&チェコフィル盤と比べると明らかに一段落ちる。演奏の熱さが違う。しかしながら、小林健一郎盤をよく研究した後がうかがえる。ほとんど同じような表現である。逆の見方をすれば、それなりのレベルに達しているともいえる。
 サントリーホールでの録音もなんと薄いことか。このディスクを聴けば、一発でサントリーホールの実力がわかる。ここは日本で1番良い音のするホールのように言われているが、私はまったくそう思わない。確かに中高音はきれいな響きの音がするが、低音がひどい。響きが美しくないし、吸音過多で聴けたものではない、気持ち悪くボンボンと硬く響く低音である。私は、今までサントリーホールへ30回以上通ったが、一度たりとも良いホールとは思わなかった。世界的に見ても、響きの薄さ、特に低音の悪さは歴然としている。サントリーホールで何とか許せる音響が聴ける席は、なんとB席またはC席、オーケストラの真横または真後ろの席である。サントリーホールができる以前、クラシックのコンサートは上野の東京文化会館が多く使われていた。私は、こちらの石と木の響きのする音のほうが、明らかに優れていると断言する。
 このディスクは、江崎氏の努力と実力を持って、何とか聴けるレベルに達しているといえよう。


メンデルスゾーン&ブルッフ ヴァイオリン協奏曲
五嶋みどり マリス・ヤンソンス指揮 ベルリンフィル


「2002&2003年録音 2003年発売 SONY SACD 5.0surround 」

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 MIDORIこと、五嶋みどりの厚く重厚なヴァイオリンサウンドが聴ける。というより、この音は五嶋みどりの声そのものかもしれない。出だしから鳥肌の立つ演奏である。以下に述べているムローヴァと比べると、音の美しさは若干劣るものの、重厚さと音の艶では明らかに一枚上である。そういった強い個性が、独奏者〜ソロヴァイオリニストとしてやっていくのに、必要なことなのであろう。メンデルスゾーン、ブルッフ、両方とも、間違いなく世界最高の演奏である。
 ライブ録音であるが、さすがSONY、SACDの開発者だけのことはある。Philipsと比べると、明らかに一枚上である。(欧米向けには、SACDはSONYとPhilipsの共同開発ということになっているが、実際はSONYがほとんどすべて開発したものであるはずである。) リアのサラウンドを全く感じさせない完璧なマルチ録音であり、非の打ち所がない。完全にコンサートホールのS席を凌駕する素晴らしいサウンドである。マルチのセッティング用としても最適である。


シベリウス&ウオルトン ヴァイオリン協奏曲
諏訪内晶子 バーミンガム市交響楽団


「2002年録音 2003年発売 Philips(UniversalMusic) SACD 5.0surround Hybrid Disc 」

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 諏訪内の今までの評価を一変する素晴らしい演奏。五嶋みどりのように情熱的。オーケストラは、多少張り切りすぎであるが、特に破綻もなく好演といえよう。デビュー盤は別として、それ以降は、まともなディスクがなく、全くフィリップスは優れた演奏家を良いオーケストラと共演させる手立てを持たないのかと思っていたが、諏訪内晶子はやっと良い機会に恵まれたようである。世界最高水準の演奏である。
 残響音が少なめで、多少乾いた録音であるが、バランスは基本的に良好。リアのサラウンドも自然。5.0サラウンド収録である点も良い。


ベートーヴェン&メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲
ヴィクトリア・ムローヴァ エリオット・ガーディナー指揮 古楽器使用のオーケストラ


「2002年録音 2003年発売 Philips(Universal Music) SACD 5.0surround Hybrid Disc 」

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 ムローヴァのヴァイオリンの音は、まさしくヴァイオリンの先生の音である。全てが優等生的〜教科書的であり、音は完璧に美しく、技法は正確で完璧である。汚い音やミスが完全にゼロに近い。少しテンポは遅めであるが、先ほど述べたことも加味されて、安心して聴いていける演奏である。
 総合的にはきわめて優秀な録音といって良いが、フォルテの時にリアのサウンドレベルが高すぎ、リアサウンドを意識してしまうのが、玉に瑕であり、現在のフィリプスの欠点である。マルチのセッティング用としては、ベストではない。


モーツアルトヴァイオリンとヴィオラのための協奏曲他
五嶋みどり他 
クリストフエッシェンバッハ指揮 北ドイツ放送交響楽団


「 2001年発売 SONY SACD5.0surround 」

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 私は、五嶋みどりのヴァイオリンの音色が大変好きである。重厚かつ艶やかという表現が適当と感じている。そんなヴァイオリンの音色が楽しめるディスクである。五嶋みどりの本来の個性や特徴が聴ける曲目ではないが、十分に一流どころが聴ける内容となっているといえよう。
 SONYらしく中庸かつ的確な録音で、マルチの音響で重要な各チャンネルのバランスや残響時間、直接音と間接音のバランスも合格である。ただし、ややソロの音像が大きすぎると思われる点が、完璧な録音とは言えないところであろう。


メンデルスゾーンヴァイオリン協奏曲他
ヒラリーハーン オスロ交響楽団

「2002年録音  2002年発売  SONY SACD5.0surround&SACDStereo 」

 


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 なかなかうまい演奏である。技術的欠点も見当たらない。音楽的センスも良いと思われる。しかしながら、このくらいの演奏ができる日本人ヴァイオリニストは、すぐに何人か挙げられよう。とりあえず一流といっても良い出来であるが、逆に、はっきり言えば、特段感動することも、新たな発見をすることも出来なかった。
 さすがSONYだけあって、すべてが中庸な〜優等生的な良い録音である。ソロの音像もやや小さめであるが、コンサートホールでのイメージからするとこんなものである。若干、高音域がきつい印象があるが、演奏者〜録音ホールの問題であるかもしれない。


ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲
アンネ・ゾフィー・ムッター クルト・マズア指揮 ニューヨークフィル


「2002年録音 2003年発売 D.Grammophon(Universal Music) SACD 5.1surround Hybrid Disc 」

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 ムローヴァよりは熱い演奏である。演奏者の心の起伏の感じられる演奏である。しかしながら、聞き手の好みの範囲の問題であり、芸術点は同等である。
 ライブだから仕方のないところもあろうが、位相の管理が悪い。音が右前から左後ろに流れるところがある。音全体も、あまりクリアではない。また、これも最近の録音の宿命でもあるが、ホールのエアコンのコオーッという空気の動く音〜超低音域の音も多めに入っている。ついでに、クルト・マズアのうなり声も! マルチのセッティングには使用できないディスクである。


長岡京室内アンサンブル 
チャイコフスキー&モーツアルト室内楽曲他
長岡京チャンバーアンサンブル


「 2000年録音 2002年発売  N&F  SACD5.1surround   HybridDisc 」

 


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 一聴して“世界最高の演奏”と断言できる演奏である。現時点では間違いなく世界最高の演奏であり、多分この演奏を超える演奏は、当分出てこないであろう。特に、欧米の演奏家集団から、このレベルを超える演奏が出現する確率はきわめて低いと考えられる。一音一音に表情があり、無駄な音がない、聴いていて飽きることがない、また、それぞれの音に音響的心地よさがある、これは今までの他の演奏家集団の演奏には、絶対になかったことである。アンサンブルは完璧であり、驚異的な正確さで演奏が進められる。これは、日本人を中心とした演奏家集団であるから実現したことと考えるべきである。欧米流の自己主張の強い人間の集まりでは、100%不可能なことである。日本人演奏家が世界に伍していく、一つの道筋を示しているといえよう。このディスクは長岡京の第2作であるが、第1作と比べると、より深く音楽が進行していく感がある。自然で、より彫りの深い、表現の幅が大きく、感動の幅の大きいものとなっているといえる。
 N&Fの提唱する“Nature Surround”といわれる録音は、自然で、そして彫りの深い、生き生きとした音楽のエネルギー感を伝えてくれる素晴らしい録音である。マルチ録音の素晴らしさは、このディスクの最後にテストセグメントが付属しており、そこで完全に評価可能である。そこでは各チャンネルの再現性のテスト(5チャンネルの各スピーカからの音が同じように聴こえるシステムが良いシステムである。) また、フロント2チャンネルだけ、フロントを除く3チャンネルだけ、5チャンネル全ての3種類の比較などができるようになっている。(基本的に3種類のサウンドの差が少ないシステムが良いシステムである。)現時点では、このN&Fのマルチ録音は、世界トップレベルの素晴らしい録音であると断言できる。


長岡京室内アンサンブル〜デビュー 
ヘンデル&モーツアルト室内楽曲他
長岡京チャンバーアンサンブル


「 2000年録音  2001年発売  N&F SACD5.1surround HybridDisc 」

 


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(前項とほぼ同様)
 一聴して“世界最高水準の演奏”と断言できる演奏である。現時点では間違いなく世界最高水準の演奏であり、多分この演奏を超える演奏は、当分出てこないであろう。特に、欧米の演奏家集団から、このレベルを超える演奏が出現する確率はきわめて低いと考えられる。一音一音に表情があり、無駄な音がない、聴いていて飽きることがない、これは今までの他の演奏家集団の演奏には、絶対になかったことである。アンサンブルは完璧であり、驚異的な正確さで演奏が進められる。これは、日本人を中心とした演奏家集団であるから実現したことと考えるべきである。欧米流の自己主張の強い人間の集まりでは、100%不可能なことである。日本人演奏家が世界に伍していく、一つの道筋を示しているといえよう。
(前項とほぼ同様)
 N&Fの提唱する“Nature Surround”といわれる録音は、自然で、そして彫りの深い、音楽のエネルギー感を伝えてくれる素晴らしい録音である。現時点では、このN&Fのマルチ録音は、世界トップレベルの素晴らしい録音であると断言できる。


オルガン サラウンド イルュージョン 
バッハ トッカータとフーガ他
アレッシュ バールタ


「 2001年録音 2001年発売 EXTON SACD5.0surround  」

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 少しテンポが遅いが、“朗々と響くオルガン曲”という感じが、他の演奏者と違って堂々とした演奏という感じで、これはこれでなかなか良いと思う。しかしながら、ところどころテンポが遅すぎ、音楽が死にかけているところもあるように感じる。このあたりが世界最高に属することができなかった理由である。
 チェコフィルの本拠地のドボルザークホールのオルガンの録音である。本来は残響時間の長いホールであるが、この録音ではできるだけ残響をいれずに、クリアに、そして、きわめてダイナミックに、オルガンのエネルギー感を表現している。世界最高の録音のひとつといってよいであろう。特に、トッカータとフーガの最初のフレーズでは、オーディオルームのいろいろなテストができる。特に、共振物件の発見には効果的である。このディスクのこの曲が完璧に再現できれば、オーディオルームの特性およびオーディオ装置のレベルは、世界最高水準と自負して良い。

カザルスホールのアーエンドオルガン
バッハオルガン曲他
水野均


「 2002年録音  2002年発売  N&F  SACD5.1surround HybridDisc 」

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 バッハについては、厳しい評価をせざるを得ない。細かいテンポの揺らぎがあり、音楽が均一に進行していない。心の揺れか〜技術的な稚拙さかは判断が難しいが、他の曲に関しては、特に問題を指摘するところは少ない。しかしながら、肝心のバッハがこれでは、評価は合格点に達しないとせざるを得ない。
 小規模ホールでの、小規模オルガンを的確に捕らえた良い録音である。響きの量も時間も適当である。直接音と間接音の配分も適当である。





天来の響き オルガンの新世界 
バッハ トッカータとフーガ他
ベルンハルド レオナルディ


「 2000年発売 Pioneer DVD-Audio  48kHz /24bit/5CH /LinearPCM 」
「 PDIF-5CHフルデジタル伝送にて試聴」

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 現時点では、最高のオルガン演奏ディスクである。トンコープマンほど個性的過ぎず、バールタほど鈍重過ぎず、演奏技術は完璧であるのは当然であるとしても、音楽的には中庸でありながら内容が深い。何度聞いても飽きの来ない演奏でありながら、音楽的感動があり、音響的な快感がある。一番初めのトッカータとフーガの下降音階は、いつ聴いても感動的で身震いするようである。おそらく17〜18世紀の人々は、これを聴いて神の降臨を体感したであろう、そんな激しい情動を感じずにはいられない。この録音は、リアに3台のオルガン、フロントに1台のオルガンを配し、4台をシンクロさせて演奏を行っている。したがって、リアのサウンドの方がフロントより大きな音で聞こえる時が多く、オーディオ的に十分な検討がなされた上で、初めてオリジナルの素晴らしさを体験できる。
 世界最高水準の録音である。前述のように、このディスクの再生は、リアのサウンドがフロントのサウンドと同じか〜フロント以上に重要である。したがって、中途半端なリアスピーカー~アンプでは、まともな再生は出来ない。フロントと同程度のスピーカー~アンプを投資して初めて、このディスクの素晴らしさを味わえるといえよう。高温から重低音まで、全ての音が完璧にとらえられている。直接音と間接音のバランス~残響時間も絶妙である。私は、このディスクをすでに500回以上聴いて来た。念のため、予備のディスクを購入して大事に保存してある。毎日聴いても1年や2年では飽きることはないであろう、それほど録音も演奏も素晴らしい。現時点では世界最高のDVD−Audioディスクであり、今後、当分これ以上のものは出てこないであろう。私は、このディスクの製作者、ドイツで活躍する西村氏にメイルを送り、その素晴らしさを褒め称えた。すぐに地球の裏側から、御礼の返信が来た。是非、多くの人にこのディスクを聴いていただきたいものである。


オルガンスペキュタクラー バッハオルガン曲他
トンコープマン


「2000年録音 2000年発売 DVD-Audio 48kHz/24bit/5CH/LinearPCM」

 


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 個性的な演奏である。いわゆるトンコープマン節が聴ける。彼なりに解釈したバッハといえようか。このような演奏が、時代を超えて評価され続けていくかどうかは疑問であるが、音楽的に許容される範囲での個性の表現という点では、彼ほど成功している音楽家は少ないであろう。
 オルガンが小さいので、SPECTACULARではない。“なんとなくTELDECかな”というのが、適当な表現と思われる録音である。2チャンネルTELDECの録音の特徴である、低音域はゆるゆる、中高音域はきつめ、残響は少な目という特徴が残るものの、マルチでは、その欠点が薄められて、聴きやすく楽しめるものとなっているように感じられる。

ポールウィンター&フレンズ プレイ 
バッハ バッハオルガン曲他
ポールウィンター


「 2000年発売 Pioneer DVD-Audio 96kHz/24bit/5.1CH/5CH/4CH/LinearPCM 」
「 PDIF-5CHフルデジタル伝送にて試聴 」



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 一応オルガン曲のディスクに分類したが、ディスクの企画自体は、録音の違いによるサウンドの違いを聴き分けるといったもので、イージーリスニングと思ってよい。ただし、演奏そのものは、まじめに正統的な演奏が行われているので、真剣に聴いていける内容である。曲によってはノイズが目立ったり、録音レベルが大きすぎたり、小さすぎたりとそろっていないが、演奏そのものは優秀といえよう。
 前述のベルンハルド レオナルディのディスクと同じく、パイオニア独自のインターフェイスPDIFにより、完全フルデジタル伝送できるディスクである。今後このようなディスクは、著作権の問題から出てくる可能性はほとんどない。パイオニア自身も、このPDIFという方式は、すぐに放棄してしまい、現在はSONYなどと同じi―LINK方式で、AVアンプにデジタル伝送する方式を採用している。ピュアオーディオの世界で、フルデジタル伝送できるプレイヤーとデジタルプリアンプは、パイオニアのDV−AX10とC−AX10のみである。かく言う私も、現在この2機種の組み合わせのみではなく、ESOTERICのDV−50なども使用しているので、パイオニアのプレイヤーの使用頻度は極端に少なくなってしまった。録音自体は、曲ごとにいろいろな条件設定があり、一概には言えないが、基本的に良好である。ただし、全てが世界最高レベルということではない。



十勝野
神山純一

「2000年発売  Pioneer DVD-Audio 96kHz/24bit/5CH/LinearPCM」
「PDIF-5CHフルデジタル伝送にて試聴」


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 シンセサイザーやアコースティック楽器を組み合わせて作ったマルチ録音である。ポップスの世界の音づくりである。録音機械もそれなりのものが使用されていると思われ、良いサウンドの良い演奏である。BGMとしては、最高レベルの演奏である。
 一度76センチのマルチトラックアナログマスターテープに録音したものを、ミックスダウンしたマルチ録音である。アナログ録音特有の丸いサウンドである。特に低音域が丸く心地よいが、本来の低音は、もう少しエネルギーがあるものである。アナログ録音への郷愁を感じるためのディスクといえよう。アナログマスターを使った録音の中では、世界最高レベルの録音である。